Immersive Van Goghがトロントで開幕、車内鑑賞と歩行型展示を併設
旧印刷工場を投影空間へ転用し、52台のプロジェクターで作品を上映。車に乗ったまま見る方式も導入した。
「Immersive Van Gogh」は2020年7月、トロントの旧Toronto Star印刷工場で開幕した。ゴッホの絵画を壁と床へ投影し、音楽とともに約35分の映像として上映する展示である。
新型コロナウイルス感染症の流行下で開幕したため、歩いて鑑賞する区画と、車内から見る区画を同じ建物に用意した。制作会社PRGの記録によると、歩行型では来場者同士の距離を確保し、ドライブインでは一回に10台を受け入れた。
印刷工場の大空間を投影面に変える
会場では52台のプロジェクターと14台のメディアサーバーを使い、約60万立方フィートの空間を映像で包んだ。絵を額縁ごと再現するのではなく、筆触、人物、風景を分解して動かし、複数の壁をまたいで見せる。
公式プレスキットでは、映像は9,000万画素、6万600フレームで構成され、ゴッホ作品約40点を使用したと説明している。投影機材を支えるトラスは約800フィート、配線は約16km、音響は26台のサラウンドスピーカーを使った。
Massimiliano Siccardiが映像構成、Luca Longobardiが音楽を担当した。来場者は会場内で立つ場所を選べる。
PRGはLighthouse Immersiveの技術パートナーとして、投影、照明、音響、メディアサーバーとCAD設計を担当した。会場の壁、柱、床を一続きの映像面として扱い、複数のプロジェクターの境界が目立たないように調整した。
車に乗ったまま鑑賞する枠を設ける
開幕時には、会場内へ車を入れ、そのまま映像を見る「Drive-In」方式も用意された。一回に10台を受け入れ、歩行型の鑑賞とは別の時間枠で運営した。
車両は工業空間の内部へ入り、エンジンを停止して上映を見る。参加者は車外へ出ず、フロントガラス越しに壁や床の映像を鑑賞した。歩行型の区画では床に距離を示す円を配置し、空いた場所へ移動する運用が採られた。
ドライブイン用の展示は、通常の歩行型展示と並行して稼働できるよう、建物内の別区画に設けられた。Panasonicの事例紹介では、追加区画にも53台のレーザープロジェクターを導入したとしている。
建物の素材を投影面として利用
会場は新聞の印刷に使われていた工業建築で、金属、レンガ、コンクリートの壁や柱が残っていた。Lighthouse Immersiveは、それらを覆い隠さず投影面として使った。平らな一枚のスクリーンに映す方式とは異なり、柱や角をまたいで一つの大きな映像に見えるよう、投影位置と色を調整している。
Panasonicの事例によると、設置作業には約10日を要した。レーザープロジェクターのエッジブレンディングと色合わせを使い、隣り合う映像の境界をつないだ。投影機は内部ネットワークで制御され、複数面へ同じ時間軸の映像を送る。
歩行型の来場者は、壁面だけでなく床にも広がる映像の中で立ち位置を変えられた。ドライブインでは車内に留まるため視点は制限されるが、同居する人と一台で鑑賞できる。感染対策による制約を、異なる鑑賞方法としてチケット化した形だった。
身体的な距離を確保しながら大型投影を共有するため、歩行と車内鑑賞の二つの運営方法を用意した。作品の映像だけでなく、入場方法と会場の使い方を開幕時の状況に合わせて組み直した。