iQIYI「Luoyang VR」、上海で開業2カ月に5000人が体験
iQIYIが中国・上海で歩行型VR作品「Luoyang VR Project」を公開。約300平方メートルの空間で歴史IPを体験化した。
iQIYIは2023年6月20日、中国・上海で同年4月に公開した「Luoyang VR Project」の体験者が5,000人を超えたと発表した。同社の歴史ドラマIP「Luoyang」をもとにした歩行型VRで、約300平方メートルの会場を実際に移動する。映像配信で展開してきた物語を、来場者が身体で体験するオフライン企画へ広げた。
制作はiQIYIのDREAMVERSEスタジオ。メタバース型テーマパークを手掛けるX-METAが提携先となり、会場運営を担った。iQIYIは「業界初のall-immersive entertainment experience」と説明しているが、この位置づけは同社によるものだ。
300平方メートルを歩き、乗り物にも乗る
体験にはインサイドアウト方式のトラッキングを採用した。ヘッドセット側のカメラなどで参加者の位置を捉え、外部センサーを多数置かずに会場内の移動を反映する。来場者は仮想の古都・洛陽へ入り、物語の場面をたどっていく。
会場には、車や舟、馬車などを模した実物のプロップも組み込まれた。VR内で乗り物に乗る場面と、現実に触れる物の形や位置を合わせる。床を歩くだけのフリーロームにとどめず、物語に応じて異なる乗車感覚を加える構成だった。
iQIYIは、高い風圧や滝、爆発を身体で感じられる演出も用意したと説明している。公式発表は個々の装置名や作動方法までは明らかにしていないが、映像と音に加え、現実側の刺激を場面に同期させたことが分かる。
ドラマ「Luoyang」の世界を体験へ
原作IPの舞台は、中国の歴史都市・洛陽。VR版では、映像作品で描いた街や物語を空間として作り、視聴者がその中へ入る形に変えた。参加者は決められた画面を見る立場から、場面を移動する登場人物に近い立場へ移る。
Luoyang VR Projectは、iQIYIが展開する「iQIYI Chinese Historic City Universe」(iCHCU)の一つに数えられた。この構想には、Luoyang IPから派生した12のエンターテインメント企画が含まれる。VRだけを単独で立ち上げたのではなく、同じ歴史IPを複数の形式で展開する計画の中に置かれていた。
X-METAは、会場でのVR体験に飲食、衣装への着替え、写真撮影の機会も加えたと説明している。ヘッドセットを着けている時間だけを商品にせず、体験前後もLuoyangの世界観を楽しめる来場プランを用意した。
2カ月で5,000人、次は洛陽と北京へ
上海で4月に始まってから、6月の発表までに5,000人以上が体験した。iQIYIは利用者の反応を好調と評価している。ただし、チケット価格や各日の定員、稼働率、売上は公表していない。この来場者数だけでは、事業として採算が取れていたかは分からない。
次の開催地も発表されていた。河南省の洛陽には同年夏、北京には2023年後半に展開する計画だった。従来の記事にあった「具体的な開業地は発表されていない」という記述は誤りである。LuoyangというIPと縁の深い現地、そして首都へ順に広げようとしていた。
iQIYIはこのほか、6月末に短時間型のインタラクティブ体験を3本投入する予定も示した。「Mars Rescue」「Kunlun Maze」「Apocalyptic Adventure」で、カップルなど特定の利用者層も想定していた。大規模なLuoyang VR Projectだけに絞らず、所要時間や題材の異なる作品を増やす方針だった。
配信IPを現地で歩ける体験に
iQIYIは2018年にオフラインVRへ参入し、2020年にはVRと没入型体験を制作するDREAMVERSEを設立した。Luoyang VR Projectでは、そこで蓄積した技術と自社IPを組み合わせ、約300平方メートルの来場施設へ仕立てた。
特に注目したいのは、映像をVRへ移植しただけではない点だ。乗り物のプロップや体感演出を置き、運営面ではX-METAと組んで飲食や衣装体験まで加えた。映像配信会社の強みを入口にしつつ、現地でしか得られない身体感覚と滞在時間をどう作るか。その組み立てが、IPをLBEへ展開する際の中心になっている。