築90年超の長屋を「XR HOUSE」へ、建物が光と音で人に反応
大和ハウス工業など3社が、北品川の古民家でXR実証を開始。人の動きに応じて変化する空間を公開しました。
大和ハウス工業は2022年6月2日、「XR HOUSE 北品川長屋1930」で共同実証を始めると発表した。参加したのはバンダイナムコ研究所と建築デザイン集団noizを加えた3社。実証期間は6月3日から8月31日までで、「リアルとデジタルの融合」をテーマに掲げた。会場は、東京・北品川に残る1930年代築の木造長屋を改装した建物だ。5棟から成る古民家群のうちD棟を使い、延床面積は97.70平方メートル。地上2階建てで、JR品川駅から徒歩約10分、京急本線の北品川駅からは徒歩約4分の場所にある。一般向けの予約は受け付けておらず、通常営業する体験施設ではなく検証のための空間だった。
障子・襖・畳にデジタル表現を加える
2階はバンダイナムコ研究所が担当し、和室にある障子、襖、畳へデジタル表現を組み込んだ。障子を開くと、その奥にモノクロの屋外空間が現れる。立体音響を使い、室内にいながら外へつながったように感じる空間をつくった。
襖の向こうには屋内の映像空間を用意し、環境音と組み合わせた。畳には、noizが設計した不規則な多角形の「ボロノイ畳」を採用。内部へLEDを組み込み、表示する内容に合わせて光り方を変えられるようにした。住宅に元からある建具を操作の入口として使うため、来場者は専用コントローラーを持たずに体験できる。
人の位置と接触に応じて光と音が変わる
1階と玄関からのアプローチはnoizが担当した。センシング機器で建物内にいる人の位置を把握し、来場者がLED電球に触れると演出が始まる。反応は、その時点の人の位置などに応じて変化する。結果は、空間に置かれたタイルへの映像投影と音で表現した。
公式発表は、この仕組みを「家が人格を持ったような空間」と説明している。建物側が人の動きを検知し、返す映像と音を変えるためだ。使ったセンサーの製品名、設置数、位置を判断する精度、反応を生成する具体的な条件は公表されていない。
築90年を超える建物の「住まい価値」を検証
3社が調べようとしたのは、デジタル技術とエンターテインメントを古い住宅へ加えたとき、利用者が建物の価値をどう受け止めるかだった。大和ハウス工業は企画構成と建物に関する知見を提供。noizとバンダイナムコ研究所が各階のデジタル技術を企画し、MAKE HOUSEが施工と施設運営を担当した。
実証期間中には、有識者や住宅・建築業界の関係者、学生らと意見を交わすワークショップも計画していた。ただし、2022年6月2日の発表には参加人数、体験後に尋ねる質問、評価方法は載っていない。実証後の測定結果や、技術を商品化する時期もこの資料からは確認できない。
プロジェクトは2020年12月に始まった。背景には、在宅時間が長くなった時期の閉塞感を和らげ、暮らしを楽しくする方法を探る狙いがあった。大和ハウス工業はDXへの対応と空き家問題も検討課題として挙げている。一方、この実証は一棟を使った限定的な取り組みであり、空き家活用への効果や住宅への導入費用までは示していない。