IPを使ったイマーシブエンタメ事例|ゲーム・映画・アニメを施設へ
モンスターハンター、ハリー・ポッター、イカゲーム、鬼滅の刃の施設展開を紹介。AR、参加型展示、歩行型VR、コースターで作品世界を体験する方法を比較します。
モンスターが目の前に現れる。杖を向けると魔法の演出が起きる。友人と「イカゲーム」の競技に参加する。ゲーム・映画・アニメのIPを使ったイマーシブエンタメでは、作品の場面が来場者自身の体験になる。
IPは知的財産を指し、ここでは作品のキャラクター、物語、世界観などを扱う。四つの事例から、どの場面を選び、どんな動作や設備で施設の体験にしているかを紹介する。
IPと来場者の行動、会場の設備を比較
| 作品・体験 | 来場者がすること | 主な設備・形式 | 実施・展開状況 |
|---|---|---|---|
| モンスターハンター ブリッジ | モンスターが現れる空間を見回し、音と振動を感じる | ARデバイス、360度シアター、床振動 | 2025年万博で実施。2027年度を目途に淡路島へ移設予定 |
| Harry Potter: Visions of Magic | 魔法界の空間を歩き、杖で演出を引き出す | 空間造作、反応する映像、音響 | シンガポールで2024年11月開幕、公式サイトで販売中 |
| Squid Game Virtuals | 友人と競技に参加し、スコアを競う | 全身の動きを取り込むグループVR | Sandbox VRが提供中 |
| 鬼滅の刃 XRライド ~夢を駆ける無限列車~ | 列車の乗客として、登場人物の戦いを体感する | VR映像とコースターの動き | 本記事では2024年2〜6月の開催事例を紹介 |
施設で提供するエンターテイメント全体は「LBEとは」、VRの体験形式は「ロケーションベースVRとは」で解説している。
モンスターハンター:ARと360度シアターで同じ空間に立つ
カプコンの「モンスターハンター ブリッジ」は、2025年の大阪・関西万博、大阪ヘルスケアパビリオンに出展された。専用のARデバイス、360度シアター、立体的な音響、床の振動を組み合わせ、作品の世界を会場全体で体験する内容だ。
体験の中心は、モンスターハンターの世界が周囲に広がる感覚にある。視界に現れるモンスターに加え、音が響く方向や足元の振動が、画面の中の出来事を身体へ伝える。ゲームの世界を、専用に設計された空間とエンタメデバイスで表現した例である。
カプコンによると、万博では延べ10万人以上が体験した。2026年4月には、兵庫県立淡路島公園「ニジゲンノモリ」へ、2027年度を目途に移設すると発表した。大規模イベントで公開したコンテンツを、別の施設へ展開する計画だ。カプコンの公式発表
ハリー・ポッター:杖を使って魔法界の空間を巡る
「Harry Potter: Visions of Magic」は、Warner Bros. DiscoveryとNEONによる参加型のアート体験だ。シンガポールではResorts World Sentosaを会場に、2024年11月22日に開幕した。
来場者は杖を使いながら、魔法省やニュートの動物園などに着想を得た空間を巡る。映像が来場者の働きかけに反応し、音響と大がかりな空間造作が周囲を包む。シンガポール版には10の環境があり、「秘密の部屋」と「罠の扉」は同地で初登場した。NEONの開幕発表
公式案内の所要時間は約60分。来場者が自分で歩き、気になる場所で杖を使うため、「魔法を使ってみたい」という作品への期待が、そのまま会場内での行動になる。物語に登場する道具を、展示への参加方法として取り入れた事例だ。シンガポール公式案内
イカゲーム:ドラマの競技を友人と遊ぶVRにする
Sandbox VRの「Squid Game Virtuals」は、Netflixとの提携で制作された。来場者は競技の参加者となり、ドラマに着想を得た複数のミニゲームでスコアを競う。「だるまさんがころんだ」に当たる「Red Light, Green Light」や、体験向けに用意された新たなゲームが含まれる。作品の公式紹介
Sandbox VRは、全身の動きを取り込むモーションキャプチャーと触覚演出を使い、最大6人で参加するVRを提供する。画面で見ていた競技へ自分の身体で参加し、友人の動きや結果にも反応する形式だ。Sandbox VRの体験方式
この事例では、ドラマの舞台とルールが、グループで競うゲームへ変わっている。原作を知っている人には見覚えのある競技が入口となり、一緒に訪れた人との勝負が、その日の体験をつくる。施設側は既存のVR設備で提供する作品の一つとして、IPタイトルを扱う。
鬼滅の刃:無限列車の映像とコースターの動きを重ねる
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは「鬼滅の刃 XRライド ~夢を駆ける無限列車~」を、2024年2月1日から6月9日まで開催した。来場者は無限列車の乗客となり、炭治郎や煉獄と鬼との戦いに巻き込まれる。
360度のVR映像に、コースターの速度、重力、風が重なる。参加者は座席に乗ったまま、映像の中では物語の列車に乗っている。実際の乗り物が生む身体感覚を、作品中の移動や激闘に結び付けた構成だ。
同じ期間には、作品をテーマにした二つのレストランも展開した。「藤の花の食事処」は柱を題材にしたメニュー、スタジオ・スターズ・レストランは煉獄や無限列車を題材にした食事を提供。ライドの前後にも、作品に触れる時間を作った。USJの開催発表
作品のどの行動を、施設で体験させるか
四つの事例を比べると、使う設備は来場者にしてほしい行動と結び付いている。モンスターハンターは周囲の世界を感じる空間、ハリー・ポッターは歩いて杖を使う展示、イカゲームは友人と競うVR、鬼滅の刃は列車に乗るライドだ。
企画を考えるなら、まず原作の具体的な場面を挙げたい。「どこへ行くのか」「何を手にするのか」「誰と何をするのか」が決まると、必要な映像、音響、エンタメデバイス、空間の広さを検討しやすくなる。
展開方法にも違いがある。ハリー・ポッターは会場ごとに空間を構成し、Sandbox VRは店舗の共通設備で作品を提供する。USJは既存のライドを期間限定で活用し、モンスターハンターは万博から別施設への移設を計画する。制作・運営を担う企業は「LBEの主要企業一覧」も参照してほしい。
まとめ:作品の世界が、歩く・競う・乗る体験になる
モンスターハンターはARとシアターで周囲に世界を広げ、ハリー・ポッターは杖で参加する展示を作った。イカゲームは友人同士で競うVRに、鬼滅の刃は物語の列車へ乗るコースター体験になった。
IPを使ったイマーシブエンタメの見どころは、登場人物や舞台に加え、自分がその世界で何をできるかにある。作品に合う行動を空間や機器で実現し、飲食や別の会場への展開も組み合わせることで、ファンが作品を楽しむ場所と機会が増えている。