← INDEX

ビジネス2026年9月16日

IPを使ったイマーシブエンタメ事例|ゲーム・映画・アニメを施設へ

モンスターハンター、ハリー・ポッター、イカゲーム、鬼滅の刃の施設展開を紹介。AR、参加型展示、歩行型VR、コースターで作品世界を体験する方法を比較します。

REVIEWED
Harry Potter Visions of Magicの壁面に家系図が広がる空間の公式画像
画像:NEON提供/Harry Potter: Visions of Magic。All characters and elements © & ™ Warner Bros. Entertainment Inc. Publishing Rights © JKR.

モンスターが目の前に現れる。杖を向けると魔法の演出が起きる。友人と「イカゲーム」の競技に参加する。ゲーム・映画・アニメのIPを使ったイマーシブエンタメでは、作品の場面が来場者自身の体験になる。

IPは知的財産を指し、ここでは作品のキャラクター、物語、世界観などを扱う。四つの事例から、どの場面を選び、どんな動作や設備で施設の体験にしているかを紹介する。

IPと来場者の行動、会場の設備を比較

作品・体験 来場者がすること 主な設備・形式 実施・展開状況
モンスターハンター ブリッジ モンスターが現れる空間を見回し、音と振動を感じる ARデバイス、360度シアター、床振動 2025年万博で実施。2027年度を目途に淡路島へ移設予定
Harry Potter: Visions of Magic 魔法界の空間を歩き、杖で演出を引き出す 空間造作、反応する映像、音響 シンガポールで2024年11月開幕、公式サイトで販売中
Squid Game Virtuals 友人と競技に参加し、スコアを競う 全身の動きを取り込むグループVR Sandbox VRが提供中
鬼滅の刃 XRライド ~夢を駆ける無限列車~ 列車の乗客として、登場人物の戦いを体感する VR映像とコースターの動き 本記事では2024年2〜6月の開催事例を紹介

施設で提供するエンターテイメント全体は「LBEとは」、VRの体験形式は「ロケーションベースVRとは」で解説している。

モンスターハンター:ARと360度シアターで同じ空間に立つ

カプコンの「モンスターハンター ブリッジ」は、2025年の大阪・関西万博、大阪ヘルスケアパビリオンに出展された。専用のARデバイス、360度シアター、立体的な音響、床の振動を組み合わせ、作品の世界を会場全体で体験する内容だ。

体験の中心は、モンスターハンターの世界が周囲に広がる感覚にある。視界に現れるモンスターに加え、音が響く方向や足元の振動が、画面の中の出来事を身体へ伝える。ゲームの世界を、専用に設計された空間とエンタメデバイスで表現した例である。

カプコンによると、万博では延べ10万人以上が体験した。2026年4月には、兵庫県立淡路島公園「ニジゲンノモリ」へ、2027年度を目途に移設すると発表した。大規模イベントで公開したコンテンツを、別の施設へ展開する計画だ。カプコンの公式発表

ARデバイスを装着した参加者と360度シアターのモンスター
大阪・関西万博での「モンスターハンター ブリッジ」。専用ARデバイスと周囲の映像を組み合わせた体験。 画像:カプコン。© CAPCOM。公式配布資料

ハリー・ポッター:杖を使って魔法界の空間を巡る

「Harry Potter: Visions of Magic」は、Warner Bros. DiscoveryとNEONによる参加型のアート体験だ。シンガポールではResorts World Sentosaを会場に、2024年11月22日に開幕した。

来場者は杖を使いながら、魔法省やニュートの動物園などに着想を得た空間を巡る。映像が来場者の働きかけに反応し、音響と大がかりな空間造作が周囲を包む。シンガポール版には10の環境があり、「秘密の部屋」と「罠の扉」は同地で初登場した。NEONの開幕発表

公式案内の所要時間は約60分。来場者が自分で歩き、気になる場所で杖を使うため、「魔法を使ってみたい」という作品への期待が、そのまま会場内での行動になる。物語に登場する道具を、展示への参加方法として取り入れた事例だ。シンガポール公式案内

Harry Potter Visions of Magicの街並みを再現した公式空間画像
「Harry Potter: Visions of Magic」の公式空間画像。建物の造作と光の演出で、魔法界を歩く場面を作る。 画像:NEON。All characters and elements © & ™ Warner Bros. Entertainment Inc. Publishing Rights © JKR.。公式配布資料

イカゲーム:ドラマの競技を友人と遊ぶVRにする

Sandbox VRの「Squid Game Virtuals」は、Netflixとの提携で制作された。来場者は競技の参加者となり、ドラマに着想を得た複数のミニゲームでスコアを競う。「だるまさんがころんだ」に当たる「Red Light, Green Light」や、体験向けに用意された新たなゲームが含まれる。作品の公式紹介

Sandbox VRは、全身の動きを取り込むモーションキャプチャーと触覚演出を使い、最大6人で参加するVRを提供する。画面で見ていた競技へ自分の身体で参加し、友人の動きや結果にも反応する形式だ。Sandbox VRの体験方式

この事例では、ドラマの舞台とルールが、グループで競うゲームへ変わっている。原作を知っている人には見覚えのある競技が入口となり、一緒に訪れた人との勝負が、その日の体験をつくる。施設側は既存のVR設備で提供する作品の一つとして、IPタイトルを扱う。

Squid Game Virtualsのヨンヒ人形と緑のジャージ姿の参加者を描いたゲーム画像
「Squid Game Virtuals」のゲーム画像。「だるまさんがころんだ」を題材にした競技をVRで体験する。Courtesy of Sandbox VR。SQUID GAME™/© Netflix。公式作品紹介

鬼滅の刃:無限列車の映像とコースターの動きを重ねる

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは「鬼滅の刃 XRライド ~夢を駆ける無限列車~」を、2024年2月1日から6月9日まで開催した。来場者は無限列車の乗客となり、炭治郎や煉獄と鬼との戦いに巻き込まれる。

360度のVR映像に、コースターの速度、重力、風が重なる。参加者は座席に乗ったまま、映像の中では物語の列車に乗っている。実際の乗り物が生む身体感覚を、作品中の移動や激闘に結び付けた構成だ。

同じ期間には、作品をテーマにした二つのレストランも展開した。「藤の花の食事処」は柱を題材にしたメニュー、スタジオ・スターズ・レストランは煉獄や無限列車を題材にした食事を提供。ライドの前後にも、作品に触れる時間を作った。USJの開催発表

煉獄杏寿郎や炭治郎と来場者を組み合わせた鬼滅の刃XRライドの公式イメージ
2024年に再登場した「鬼滅の刃 XRライド ~夢を駆ける無限列車~」の公式イメージ。画像:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン。©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable TM & © Universal Studios. All rights reserved.公式配布資料

作品のどの行動を、施設で体験させるか

四つの事例を比べると、使う設備は来場者にしてほしい行動と結び付いている。モンスターハンターは周囲の世界を感じる空間、ハリー・ポッターは歩いて杖を使う展示、イカゲームは友人と競うVR、鬼滅の刃は列車に乗るライドだ。

企画を考えるなら、まず原作の具体的な場面を挙げたい。「どこへ行くのか」「何を手にするのか」「誰と何をするのか」が決まると、必要な映像、音響、エンタメデバイス、空間の広さを検討しやすくなる。

展開方法にも違いがある。ハリー・ポッターは会場ごとに空間を構成し、Sandbox VRは店舗の共通設備で作品を提供する。USJは既存のライドを期間限定で活用し、モンスターハンターは万博から別施設への移設を計画する。制作・運営を担う企業は「LBEの主要企業一覧」も参照してほしい。

まとめ:作品の世界が、歩く・競う・乗る体験になる

モンスターハンターはARとシアターで周囲に世界を広げ、ハリー・ポッターは杖で参加する展示を作った。イカゲームは友人同士で競うVRに、鬼滅の刃は物語の列車へ乗るコースター体験になった。

IPを使ったイマーシブエンタメの見どころは、登場人物や舞台に加え、自分がその世界で何をできるかにある。作品に合う行動を空間や機器で実現し、飲食や別の会場への展開も組み合わせることで、ファンが作品を楽しむ場所と機会が増えている。